12/05/2011

ハンブルク 「アトラス」展 & クリスマス市


ヴァネツィア旅行の翌週は、迷った挙げ句、ドイツ・ハンブルクへ。
ハンブルクはベルリンに次ぐドイツ第2の都市です。

11月27日まで開催されていた、Georges Didi-Huberman氏企画の
「ATLAS How to carry the world on one's back ?」をどうしても見たいと思い、
国境を2つも越えて、夜行バス日帰り旅行を敢行してしまいました。

朝9時頃ハンブルクのバスターミナルに到着。
ハンブルクは塔の街で、駅や市庁舎、教会の塔があちこちで薄灰色の空にそびえています。




ハンブルク駅構内。私は特に鉄道マニアではありませんが、
これまで訪れた数多のヨーロッパの駅の中でも群を抜く美しさに
すっかりみとれてしまいました。
クリスマスのイルミネーションもセンスが光ります。




駅を隅々まで歩いて、カフェで朝食をとったら、いよいよ「アトラス」展へ。
会場は、中心部からは少し離れたHarburgという駅近くの倉庫のような建物。
DEICHTORHALLENという、現代アートや写真を扱うアートスペースです。
HP:http://www.deichtorhallen.de/index.php?id=5&L=1

ガラス張りのビルの奥に見える、緑の蔦に覆われた茶色いレンガ造りの建物が目的地。



「アトラス」展は、2010年の7月から、
1年以上かけてカールスーエ、マドリッドを巡回し、ハンブルクが最終会場。


アトラスと聞くと、まず地図帳を思い浮かべますが、
もともとはギリシャ神話に登場する神で、両腕と頭で天の蒼穹を支える姿で表されます。
16世紀の大航海時代に、アトラスが表紙を飾る地図帳が多く出版され、
地図帳そのものの呼び名として定着していったようです。


Didi-Huberman氏によると、
アトラスは「知の目に見えるかたち[une forme visuelle du savoir]」であり、
「見ることの知的なかたち[une forme savante du voir]」でもあります。
(Georges Didi-Huberman, Atlas ou le Gai Savoir Inquiet , Minuit, 2011, p.12.


そのかたちは決定的なフォルムを持たず、
流動的で一時的なものであるがゆえに、無限に新しい関係性を生み出していきます。


これは、地図帳としてのアトラスはもちろん、
私たちをとりまく様々なフォルムに対して言えることかもしれません。


したがって、世界を読み取ることは、世界の物事の関係性を読み取ることでもあり、
そこでは、厳格な意味や言語以前の、フォルムそのものの読解が必要になります。


こうした考え方は、ハンブルク生まれの思想家アビ・ヴァールブルグが
時代も地域も異なるさまざまなイメージをパネルに並べて配置した
「アトラス・ムネモシュネ」と通底するものであり、
展覧会もこのパネル写真から始まります。





展覧会のイメージとして用いられた、August SanderのHandlangerが
サブタイトルの「How to carry the world on one's back ?」に心憎いほどぴったり。








会場構成は非常に複雑で、迷路のよう。地下1階、地上3階建てで、中央に階段があり、
四方八方にある開口部から、別の空間を覗き込んでいると、
今どこにいるのかすっかり分からなくなります。 

テレビを用いた大掛かりなインスタレーション 


展示室から見た建物の外観。 



こちらは詩人ランボーの地図。ところどころ切り取られています。





かつての思想家や芸術家たちが誰かに宛てて送った古い建物の絵はがきの複製。
好きなカードを持って帰ることができます。



個人的には、美術史家メイヤー・シャピロの旅行ノートが感慨深かったです。
丁寧に彩色された細かなスケッチがびっしりと描き込まれていて、
シャピロはこんな風に世界を観察していたんだなぁと。

ひとつひとつの展示物も興味深く、会場の特殊性も相俟って
展覧会として有機的に結びついていましたが、
鑑賞がドイツ語ガイドツアーのみ(自由に見て回れない)という難点が。
会場が複雑すぎて死角が多く監視員が足りないというのが理由ではないかと思いますが、
「アトラス - ムネモシュネ」がテーマの展覧会にも関わらず、
無数のイメージの間を歩き回るという自由が奪われてしまったのは残念でした...。

しかも私が参加したツアーのガイドさんは、会場の隅にある小部屋にはまったく
案内してくれず、最後にこれでおしまいと言われたときに、
まだ見てない部屋がたくさんある!と思った私は、
こそっと舞い戻って、静かにひとりツアーを楽しみました。

Didi-Huberman氏による展覧会解説。
http://www.youtube.com/watch?v=WwVMni3b2Zo




カタログは売り切れですが、フランス語ではMinuit出版社から
Georges Didi-Huberman, Atlas ou le Gai Savoir Inquiet という本が刊行されました。



展覧会を見終わって、市街地に戻りふらふらしていると、
ヨーロッパの冬の風物詩クリスマス市を発見!!! 

さっそくグリューワインで暖まります。



もちもちの生地にきのことハーブを練り込んで、
上にサワークリームをのせたパン。


キャンドル屋さん。


ハンブルクは港町なので、カモメがたくさんいます。
よく見るとなかなか可愛い顔。



クリスマス市でお腹を満たした後はハンブルク美術館へ。 
ドイツの近代画家マックス・リーバーマンの個展を開催中でした。



現代美術の展示も充実。 しかし、リーバーマンの会場の熱気とは裏腹に
人がほとんどいません....



中世〜近代絵画は別の建物で、 フリードリヒ、メンゼルといったドイツの巨匠に加え、
フランス近代絵画のコレクションも充実しています。

偶然見つけたボナールの作品。夕暮れの海を描いた色合いが、
ポンピドゥーで開催中の個展に出品されているムンクの作品と非常によく似ています。


美術館が閉館した後は、再びクリスマス市へ。
(何も調べて来なかったので他に行くところが分からない...)
川沿いの方は、青いイルミネーションです。



お店のライトアップもドイツらしいデザイン。


小さいドーナツのようなお菓子。





メルヘンな世界に見えるけれど、左手の赤いお店はソーセージ屋さんで、
屋根の装飾には豚の頭が...。


壮麗な夜の市庁舎。


乗り物がやたら現代的な(船やバスや消防車)メリーゴーランド。 

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